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西尾市岩瀬文庫の世界

雑兵物語 [江戸時代初期成立・弘化3年版]

足軽などの雑兵の、手柄や失敗、あるいは見聞など、戦場での体験を会話の形で記したもの

 本書は、足軽などの雑兵の、手柄や失敗、あるいは見聞など、戦場での体験を会話の形で記したものです。作者は不明ながら、戦国の残り香がいまだ漂う江戸時代初期に書かれ、いくつもの筆写本がつくられて江戸時代を通じて読み継がれました。そしてついに江戸時代後期の弘化3(1846)年、版本として出版されたのがこの本です。

 

 戦場での心得や、武器・用具の扱い方、物資の輜重、救急衛生の処置などを平易な言葉で解説した点から見ると、下層兵卒にむけての陣中心得を説いた兵法書ととることもできるし、随所に見られる実戦の経験に基づく記述や、当時の関東の下級武士が使った荒っぽい言葉である「奴言葉」そのままの語り口からは、雑兵のいくさ従軍記録として読むこともできます。身分の低い雑兵たちの実態や会話などは残されることが極めて少ないものであるだけに、貴重な資料です。

 

 本書に登場する雑兵は、鉄砲足軽・弓足軽・鎗担(かつぎ)・馬標(うまじるし)持・旗差・筒持・弓持・草履取・挟箱持・馬取・沓持・矢箱持・若党・夫丸(ぶまる)・中間などいった、総勢30名です。一人の侍が出陣するには、これぐらいの雑兵をお供につれてゆくのだなということがわかります。ともすれば、合戦は武将たちの華々しい活躍のみが語られますが、決して合戦は武将だけで行われたものではなく、本書に登場するような、名もなき雑兵たちの生と死の累積であったのです。

雑兵物語

身分の低い雑兵たちの実態や会話などが残されている貴重な資料

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